いきなりテンカウント感想(1〜5巻総括)
1.はじめに
はい、BL漫画「テンカウント」です。
*1巻の表紙、ゾクゾクしますよね。
もう、これはそんなに商業BLに興味を持てずにいた自分を変えた作品でございます。
まず、テンカウントを簡単に説明すると、潔癖症(不潔恐怖症)の社長秘書城谷さん(歳上の美人系ですね)と、心療内科で働くカウンセラーの黒瀬くん(歳下の男前系ですね)のラブストーリー・・・ってことになりますかね。
皆様、これでいいでしょうか? 大丈夫ですか?
ちょっとgoogleってみます。
以下、wikipedia「テンカウント」より引用。
「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2015」第1位、「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2016」第1位、「BLアワード2015」コミック部門ランキング第1位、『このBLがやばい!』2016年度ランキング第1位、「SUGOI JAPAN Award 2017」漫画部門にて第3位を獲得。シリーズ単行本発行部数累計150万部突破(wikipedia「テンカウント」より)。
・・・ウンウン。まあ、そうですよね。
自分が「何これスゴイ!!」って思うものは、大抵皆もそう思っているという法則。
テンカウントの魅力を語りたいと思います。
自分がハマっている理由を、以下大きく3つに分けてつらつらと述べたいと思います。
*盛大にネタバレを含むのでまだ未読だという方(コノヤロー羨ましいな!)はご注意ください!!
2. テンカウントの魅力3つ
⑴ 服装がツボ!!
まず服装ですね。
城谷さんは社長秘書で、仕事でもプライベートでもスリーピースのスーツを着て白い手袋を着けています。
いや〜〜〜・・・グッジョブ!! これだけで白米3杯食べられるやん。
スリーピースも手袋もめっちゃエロいじゃないですか?? 皆さん好きですよね??
私は大好きです!!
潔癖症ゆえにほとんどいつも手袋を着けており、プライベートでも手袋が浮かないスーツを来てるという設定・・・うまい! ! 実に自然にいつでもスーツ姿が堪能できるってわけですね。
座布団を2枚一気に進呈したいです。
トレンチコートを着ていることも多いですね。靴は革靴。
城谷さんは全体的に綺麗目でコンサバティブな服装です。
こう、ちょっと澄ました感じで、歳上の綺麗なお兄さんは好きですか? って感じです。
少し若い可愛さも残しつつ大人の色気を漂わせる、31歳(32歳)。絶妙な年齢設定ですよ。
シワやヨレ等が絶対許されない系の格好で、女子で言えば正に王道コンサバ女子アナ系って感じなのでしょうか。男子の王道モテ爽やか系とも少し違うかな。
ちな、シャツ一枚の格好のサービスシーン(?)も結構あり、あ・・・ありがとうございます(土下座)!!
城谷さんとは対称的に黒瀬くんは完全カジュアルで、全体的に黒め。
黒のVネックカットソーにブルゾン等を羽織って、カジュアル系パンツに足元は大抵スニーカー。
黒瀬くん自身もスーツは「リクルートか冠婚葬祭の時くらいしか着ない」旨の発言をしております。
で、この対称的な感じが・・・いいんですよ!!
お互い似合っているし、キャラにも合っていて、職業的にも説得力があって。
で、お高そうな雰囲気の城谷さんが、体育会系大学生感のある道端に咲く野草的魅力の(??)黒瀬くんにめちゃめちゃにされる(!!)っていうのが、たまらないわけですよ!!
⑵ お互いを好きになるのに説得力がある
① 城谷さんのトラウマ
城谷さんは父子家庭育ちで完全にファザコンです。
素直で純粋な可愛い城谷少年です。
で、この父親が結構色男なのかな。知り合いの女子高生が城谷父を気に入っており(できていたような描写もあり)、城谷少年がどうも気にくわない。
まあ子供じみたライバル心ですね。
この女子高生かなりの曲者で、策略を巡らしてロッカーに隠れた城谷少年に父親と自身のラブシーンを見せつける。
それを見て(聞いて)、城谷少年はロッカーの中で自慰してしまう。
おそらくなんですが、城谷さんは父親へ性愛も含んだような愛情を持っていた。
・・・と言うかファザコンと同性愛がごっちゃになったような感じなのかな? ノンケっぽい発言(黒瀬くんに好きだと言われて「自分男なんだけど・・・」みたいに考えている)もしてますし、城谷さんの性的指向は未熟なワタクシにはイマイチ読み取れない部分もあります。
自慰したことを女子高生に「気持ち悪い」と言われたこともあり、父親へ性欲を感じる自分を「気持ち悪い」「汚い」と感じるようになり、その反動で周りのあらゆるものが「汚い」(汚い自分に触れて汚くなるから)と感じるようになってしまう。
しかし、彼が自分を汚いと思った根源は「父親へ性欲を感じること」なので、本音では、本能的には、誰か父親的な人に自分を汚してほしい(自分と性的なことをして欲しい)と思っている。
黒瀬くんはそれを見事見抜いていたわけです(城谷さんは割と自分のことでいっぱいっぱいですが、黒瀬くんは非常に他人のことをよく見ていますね)。
黒瀬くんに「偉かったですね」と言われる度に、城谷さんは(性的に)興奮してましたが、黒瀬くんに父親的なものを感じていたわけですね。
黒瀬くんはまだ若いですが、カウンセラーという職業柄もあるのか、父親的なところがあるんですよね。
② 黒瀬くんのトラウマ
他方、黒瀬くんは自分に無関心な両親の元で育って、幼い頃慕っていたのは近所の潔癖症持ちの、西垣という男性。
黒瀬少年は、両親からあまり様々な感情を向けられてこなかったせいか子供の割に無表情で、しかし聡明な少年です。
西垣が自分には気を許していて、自分は彼の特別だということに満足を覚えていました。
両親の愛情を満足にもらえず、おそらく誰かに求められること、誰かの特別になることを渇望していた黒瀬少年。
西垣を慕い、同時に西垣に性欲を覚えていたような描写があります。黒瀬くんも同性愛志向は結構明確にあったわけですね。
西垣を押し倒して西垣に拒否されて以来、黒瀬少年は西垣と会う機会がなく、そんな中、西垣が失踪しただか自殺しただか、という噂を聞く
(押し倒して身体を舐める・・・黒瀬少年はかなり早熟ですよね。ちょっと子供っぽい雰囲気の城谷少年と対照的です)。
その後、西垣の読んでいた「とらわれる生き方」という本を読んで、その本で描かれている、「世間から切り離される恐怖」「誰からも愛されていないと感じる寂しさ」が心に刺さり泣いてしまう。
それで西垣を救えなかったことを強く後悔し、潔癖症の人を救うために勉強するようになる。
本を読んで泣いてしまったのは、やはり、西垣も感じていたであろう、「誰からも愛されていないと感じる寂しさ」に共感したからなんでしょう。当たり前ですが、黒瀬少年は両親の関心を得られなくて寂しかった(母親の関心を引こうとする行為をさりげにしていて、でも毎回相手にされず。もう健気で泣けます・・・)。
ここまで子供に無関心な親が実際にいるのか、というのは個人的には疑問なのですが・・・、まあ、世間には確かにいるのかもしれない。
黒瀬少年は、恋愛感情ゆえの独占欲で、社会へ出て行こうかと考える西垣の背中を押すことができなかったんですね。
そんな中、出会った城谷さんは、潔癖症で、他人に対し壁を作る性格。でも、自分には少し心を許してくれて、さらに黒瀬くんの前で「自分を汚して欲しい」という性的な願望を隠せていない。
黒瀬くんは、城谷さんに恋愛感情や性欲を強く覚えるけれど、自分のその感情ゆえに城谷さんを傷付けたり(主に城谷さんの潔癖症を悪化させるといったことかな)、城谷さんに逃げられることも恐れている。つまり、西垣の時の失敗を繰り返したくないわけですね。
黒瀬くんは余裕があるようでいて、西垣のように城谷さんを失ってしまうのを非常に恐れていて臆病にもなっているんですよね。
黒瀬くんの妙な焦らしプレイは、本人の性癖で楽しくてやっているのか、城谷さんを逃さないために戦略的にやっているのか、城谷さんに無理をさせないように気を遣っているのか、一体なんなんだ黒瀬!! と思っていたのですが・・・もう、「全部」かもしれないという結論に至っています。
でも、黒瀬くんの焦らしプレイがあったからこそ、城谷さんは黒瀬くんに導かれた結果ではありますが、自分のトラウマを自分の意思で少し克服できたわけですね。
黒瀬くんの焦らしプレイは、凄いですよ。
彼は多分、嘘は全く言っていないんです。嘘八百で相手をだまくらかす様なその辺のヤリチン男みたいなことはしない。
ただ、相手が自分に期待しているだろう言動を「あえて」しないことによって、また時にはすることによって、その選択でうまく城谷さんを導いているわけですよ。
末恐ろしい26歳(27歳)ですわ。
③ 城谷さんと黒瀬くんのケミストリー
城谷さんも黒瀬くんも、頭の中で心(理性=相手を汚したくないとか傷つけたくないという気持ち)と身体(本能=性欲)が戦っていて、そのせめぎ合いが1巻から4巻辺りまでずーっと続きます。
その葛藤の中、段々と、お互い性欲を我慢できなくなっていくんです。
それで、5巻でひとまずのゴールを迎えるわけですよね。
特に城谷さんにつき、完全に性欲が勝ってしまうわけですね、ハイ。
皆さん、5巻、最高でしたよね??
チクショー黒瀬てめえ!! 良かったなコノヤロー!!
性欲が勝るとか書くと、何だかダメな人間みたいなんですが、つまり性欲に繋がる恋愛感情が勝ったんだと思ってます。
拒絶されるのが怖いとか、本当の自分を知られるのが怖いとか、過去のトラウマに基づいて自分で自分を抑え込んでいたものから解放されるんですよね。
皆、色々な過去の経験が原因で自分を抑え込んでいて、それは時に理性とかいう言葉で正当化されるんですが、自分自身を縛り付ける枷でもあったりするわけです。
城谷さんと黒瀬くんは、まさに出会いの化学反応(ケミストリー)で、お互い相手の存在によって、自分を縛っていたトラウマから少しずつ解放されていくんです。
過去を完全に忘れることは難しいし過去は変えられないけど、過去を認めた上で現在の自分を変えることはできるわけですよ。
それは結局、自分自身で行動して変えなきゃいけないんですが・・・他人が大きな影響を与えてくれて自分の行動のきっかけとなったりすることがあって、城谷さんと黒瀬くんは正にそんな関係で素敵だなあと思うわけです。
・・・と、こんな風に、城谷さんと黒瀬くんがお互いに強く惹かれ合うのに、十分説得力があるんですよね。
2人はやや重めの共依存関係なのですが、恋愛(性愛)にはどうしても依存は付き物だと思うんですよ。だからこそ苦しいし、悩むし、ドラマチックなんじゃないですか!!
おしどり夫婦的な愛着になるとまた違うステージに上がるのかなと思いますが。
・・・うざい長文になってしまいました。
⑶ エロい!!
はい、もう、この一言です。
すいません、盛りのついた中学生男子みたいですいません。
2で色々とグダグダグダグダ・・・書きましたが、ここですよ、つまり言いたいのは。
城谷さんは心では他人を汚いから触りたくない(汚い自分に触って汚したくない)と強く思っているのに、本当は、本能では自分に触って欲しい、汚して欲しいと思っている。
その葛藤で苦しんでいて、嫌だけど嫌じゃない・・・みたいなメンドくさい感じなのですが、その葛藤で揺れる城谷さんがなんか・・・凄く・・・エロいです。
色気とは葛藤の中で育まれるのでしょうか。
で、潔癖症ゆえに他人に触れられることに人一倍敏感なので、一々反応がエロティックになるという。潔癖症という設定を生かしてここまで官能的にするなんて作者は天才か!!
5巻を見た今分かることは、1〜4巻は全て、城谷さんと黒瀬くんの5巻の行為に至るまでの壮大かつ長〜い前戯なんですよね。
んで、前戯が長いほど本番が燃えるというのは、言わずもがな。
1巻であんなにツンと澄まして小綺麗にしていて、本屋の本も触れなかった城谷さんが、5巻であんなことになってしまうという、その幾重にもハードルを飛び越えて最後にそのまま棒高跳びをしてしまったかの様な振り幅の大きさもあって、見てるこっちは死ぬほど興奮するんです。
3、4巻辺りから、なんか急激にエロくなってきて、城谷さん10の項目すっ飛ばしていきなりそんなことも? えっ? いいんすか? って感じは多少はしましたけど。
しかし、恋愛感情とか性欲ってかなり強烈な吸引力がありますし、人をおかしな行動に駆り立てますから、そこまでファンタジーでもないんじゃないかと思いましたね。
エレベーターで乗り合わせてそのエレベーターが停まるのは、もうベタの中のベタとしか言いようがありませんでしたが、いいんです。
ベタだなんて皆分かってるんです。分かっていても、読んでて面白くドキドキすれば、いいんですよ。
あとはもう、画力が素晴らしい。
絵柄がとても好きです。非現実的すぎず、現実的すぎない感じ。
裸とか、身体の描き方も上手ですよね。
目が大きすぎるとかキラキラしすぎているとか、睫毛がもう顔から飛び出そうにバッサバサだとか、顔が小さすぎるとか、某ボールが友達漫画のように足が長すぎるとか、そういうのダメなんですわ・・・。
話が面白くても、そういうのが気になって気になって萎え萎えになってしまい、萌えられないのです。
かといって、井上雄彦先生や倉科遼先生(例えが渋い)のようなリアルな感じがいいかっていうと、ちょっとリアル過ぎてそこまで萌えられない、
・・・お前、わがまま言うなよっていうツッコミはごもっともです。
3 終わりに
3つ、魅力を挙げましたが、まだまだ魅力は沢山あるんです。それをこの表現が〜この台詞が〜とか語り始めたら更に長くなってしまうので、自重したいと思います。
テンカウント、・・・今後はどこへ向かうんでしょうか。
自分の中では5巻でカウントダウン終了してロケットはドカンと宇宙へ打ち上げられた感はあるのですが、2人の関係はまだまだこれからでしょうね。
次のゴールとしては、2人がちゃんと付き合うとか、城谷さんが10項目をクリアする、辺りになりますか。
いや、まだ付き合ってないんかい!!
あ、あと、10項目が何だろうということですが。
始めはベタに性行為かなと思ってましたが、それは明確に否定されましたし、キスかな? と思ったけど、ちょっとそれもベタだし、性行為と類似行為だし・・・どうだろう。
私の乏しいクリエイティビティでは大した発想は湧いてこないですな。
またじっくり見返してみるかな!
と言うわけで、6巻を全裸待機している間に、1巻〜5巻までの詳細な感想をまた書いていけたらと思います。
*こちらの感想はブログ主の個人的感想であり、なるほどこんなことを考えている奴もいるんだな程度に海のように広い心で受け止めていただければ幸甚でございます。