コンテンツの海を漂うのブログ

コンテンツの感想等を書きなぐるブログです。嗜好が偏り気味です(BL多め)ので注意ください。

はらだ先生「やたもも」感想〜愛を必死に求める人たち〜

はらだ大先生大好きです。

「やじるし」、「にいちゃん」を読んで、満を辞して(というほどでもない)の「やたもも」です。

 

やたもも (バンブーコミックス Qpaコレクション)

やたもも (バンブーコミックス Qpaコレクション)

 

 

 

結論から言うと、・・・最高でした!!

 

とにかくエロくて・・・、でも話がしっかりしているのと、キャラに魅力があるから、ストーリー自体にグイグイ引き込まれて、悲しくなったり、幸せな気持ちになったりできて、これぞBL・・・もとい漫画として完成されていて稀有な魅力を誇る作品です。

 

この作品の大きな魅力の2つと思う、キャラクターとエロについて語りたいと思います。

 

1 キャラクターについて

まずは主役の2人、攻めの八田ちゃんと受けのもも(百田)。

この2人の名前が、そのまま漫画のタイトルになってますよね。

 

八田ちゃんは長身でガッチリ体型、短髪・茶髪の20代前半?の男性。一見イカつくて怖そうだけど、人が良くて世話焼きで情に厚い。体力も性欲も人並み外れており、セックスの時に手加減できないのが難点。

 

ももは小柄で細身、黒髪の24歳。美人の母親にそっくりで猫っぽい顔、小悪魔(むしろ悪魔か?)のような魅力があります。

母親との軋轢等家庭環境から、小さい頃から身体を売って暮らしてきて、生活能力はゼロ。お金とお酒に滅法弱くパチスロ大好きな「ダメな大人」(byくりちゃん)。

 

このキャラ設定だけ見ても、「あっ、この2人は相性いいな」とわかっちゃうのがすごい。実際お互いが、お互いでないとダメなんだというのがとても説得力あるように描かれています(テンカウント感想でも似たようなこと言ってましたね)。

 

主役はこの2人なのですが、やはりメインはももなんだと思っています。

誰かからの愛情に飢えていたももが愛情を知り少しずつ変わっていく物語。これはももという1人の男性が愛を手に入れる物語なのです。

 

その出自や、彼女の周りの男がももに手を出したこと等でももをなかなか愛せなくなってしまった母親でしたが、ももは母親の愛情が欲しくて母親の彼氏を取ったり指輪をあげてみたり、幼いながらに母親の愛情を得ようとしますが、結局うまくいきません。

 

ももは、側から見れば好きで、楽だから、身体を売って暮らしているダメな大人かと思われそうですが、その生い立ちを考えると、彼にはそれ以外に生きる手段がなかったんですね。

その機会も与えられなかったし、方法も誰も教えてくれなかった。

なんでも「自己責任」で片付ける恵まれた環境で育った人なんかには中々この辺りは理解できないことが多いわけですが。

 

男好きする顔・身体で魅力がある故の悲劇とも言えるかもしれません。

 

3巻で、彼自身おじさんを相手とする性行為は嫌だったし、身体を売って暮らす自分自身も嫌だったことを告白しています。

(ほんと、性別問わず好きで身体を売っている人なんていないよなあ・・・)

 

自分自身が惨めにならないように、何より惨めだと思われないようにいつも笑っているももに、八田ちゃんは「我慢して笑うのやめろよ」と言います。そして、辛いことがあったら1人で抱えて処理するのではなくて、もっと自分を頼ってくれとも。

 

ももは自分が好きになれていないんですね、だから自分を雑に扱うし、周りから雑に扱われていいんだと思っている。そう思っているのはその人の雰囲気として出てくるから、周りも雑に扱っていいんだと思うという悪循環。

 

しかし、過酷な境遇で生きていた故なのか、辛い目に合いつつも誰かを責めたりせずに明るく振る舞うももは、確かにだらしがなくて生活能力・社会適合能力は低いけれど、とても強い人間ですね(八田ちゃんはそんなところを「優しい」と評していましたが)。

 

そんなももの明るさのせいか、ももとその母親を取り巻くストーリーはかなり悲惨なことも多いのですが、話全体としてはあっけらかんとした明るい雰囲気です。

 

八田ちゃんはそんなももを認めて、愛情を持って大切に扱うから、ももは自分のことを大切にできるようになり、そんな自分を好きでいてくれる八田ちゃんにも愛情を与えることができるようになる。

 

自分で自分を好きなるのが一番だと思うのですが、なかなかそれって難しい・・・。そんな時自分を愛してくれる人によって自分に自信を持って相手も愛せるようになるって、そんな相手と巡り会うのってなかなかないけど、そんな相手と出会えることもある。人生ってそんな捨てたもんじゃないよね。

 

ももの強がっているけど、とても愛情に飢えていて、お気楽に見えるけれどとても傷付いていて、そんなキャラクター描写がとても上手です。

 

ももが普段おちゃらけて強がるほど、八田ちゃんの前で本音を吐いて泣くシーンが胸に響きます。

八田ちゃんも、「いい人」キャラですが、独占欲が強くて、ちょっと強引なところがあって、性欲は中々抑えきれない、若く勢いがある感じが人間くさいですよね。

後、かませ犬としての須田もとても良い味出してます。お金持ちで冷たい感じの男ですが、欲張りすぎて自滅する男。彼もももと同じで、自分の気持ちを素直に出すことを恐れていて、ももはおちゃらけることで自分の本心を隠そうとしますが、彼はあえて相手に冷たくすることで本心を隠そうとします。あんな風で愛を求めていることも、ももと同じ。

 

自分は、人間臭くない欠点の見当たらないようなキャラクターにイマイチ惹かれないので、はらだ先生の描くような清濁併せ持つようなキャラクターはとても魅力的に感じます。

 

典型的な少年漫画に出てくるヒロインとか、少女漫画に出てくる男の子にあまり魅力を感じられないのです。それは、理想像でありすぎて「人間らしい」嫌な部分が全く排除されてしまっている事が多いから。

 

フィクションでくらい理想像を追いたいと感じるのか、リアリティーを求めたいのかその感覚の違いなんでしょうか。

 

でも、人間って、フィクションと現実をそんなはっきりと、完全に区分けできるとは思えないんですよね。

相手の嫌な部分も認められないと、恋愛も結婚も上手くいくはずがないと思っているので、人間らしさの欠如した理想像に恋するのは危険だなと(理想像と違う部分を見たら相手を一気に嫌いになったり、相手を憎んだりする人も多いわけで)個人的には思っているのです。

 

2 エロについて

作者のサービス精神全開、持てる画力を全てつぎ込んでセックスシーンを描いてくれたのでしょうか。凄いです。

セックスシーンがとにかく沢山出てくるのですが(2分の1くらいはセックスしているような・・・)、あらゆるシチュエーション、アングル、ズームで飽きさせません。

性欲先行でやっている時と、お互いに愛情を確かめ合うように優しくやっている時とを描写でちゃんと描きわけているのがすごい。ただ行為だけではなくて、その行為時の当事者の気持ちが描写で伝わってくるから、意味のないサービスとしてのシーンだけではなくて、ストーリー上必要性のあるシーンもあって、しらけないんですね。

 

やたちゃんはとにかく絶倫で立派なモノを持っていて、ももは身体が柔らかくて、エロ書く気マンマンの設定がよいですね。

もうこれに関しては実際に読んでくれとしか言えない感じです。

こんな絶倫で立派なモノを持っているやたちゃんなので、相手が男であるももであることで何とか耐えられている(??)というのもこう、妙な説得力があります。

 

こう、BL初心者向きではないですが、そろそろネクストステージへ行きたい(?)という方にはぜひぜひ。素晴らしいです。