ユーリという時代の転換点について〜前編〜
今更ここで紹介するまでもないですが、女性を中心として人気が爆発し、2016年のアニメ業界を制圧したアニメ、それが氷上で生きる男たちの物語、「ユーリ!!! on ICE」ですね。
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*なぜかイベント申込券付きのamazonしか見つからない。
自分もハマりましたよね。だって、面白いもん。もう単純に。
仕事中もユーリのこと考えてしまうという次元混同を引き起こす事態が発生。
並々ならむ熱意とこだわりを持った監督とその熱さにちゃんと食いついていく各方面のプロフェッショナル、そして多くのスタッフの力で完成した奇跡の一作ではないでしょうか。
演出が上手でテンポ良く進み飽きさせない、音楽も良し、台詞も良し、細かいこだわりも随所に見られる。
作り手の作品への愛、そして「フィギュアスケート」という題材に対する愛が強く感じられますね。
単なる作り手の自己満足アニメではないし、自分の鬱憤を晴らすために何かを密かに攻撃しているアニメではない(意外と、創作物に後者のカタルシスを持ち込んでいる作品ってとても多い気がしますね)。
主人公の勇利がアニメ中で今季のテーマは「愛」と述べるシーンがありますが、まさにこの作品自体には「愛」を感じました。
山本沙代監督は「峰不二子という女」を観たりして、表面上とてもスタイリッシュというか洒落ている映像作りのセンスのある人でもあり、かつその綺麗なパッケージの中にとても人間臭さとか泥々したものを入れ込むのが上手な(勝手な)イメージでしたが、今回もセンスと業の深さを感じましたね・・・。
キャラクター原案・アニメのネーム作成の久保ミツロウさんは流石のストーリーテーリングと、リアルで魅力的なキャラクター造形。魅力的な男性を描くイメージはなかったけれど(失礼!)、リアル寄りの絵で絵がれたキャラクターたちは、パッと見で「良い!!」・・・というよりもアニメを見ていくうちにどんどん魅力にハマる。
その言動がとても人間らしくて、でも程よくぶっ飛んでる(やはりプロのフィギュアスケート選手なので、癖のある性格だったりする)。
監督のこだわりとして、「男性キャラの色気を出す」というのがあったようで、これが見事に世の乙女たちを興奮させましたね。
これまで「綺麗」「セクシー」「色気」「可愛い」と言った形容詞は、クリエイターの男性目線で、大抵女性キャラクターでのみ表現されてきましたが、いやそれって女性の専売特許じゃないだろと、ある意味旧態依然としたアニメ業界へ挑戦した作品でもあると思います。
それで、それってまさに世の女性が意識的にか無意識的にか求めていたものであって。
女性クリエイターの不在や、「女性はこう」「男性はこう」といった社会の固定観念などから中々実現してこなかったものだと思うのです。
これまでも「女性向け」とされるアニメは多少存在してきましたが、そこで描かれる男性の魅力というのは、色気というよりも王子様然とした綺麗なルックスや、ツンデレ・俺様といった性格・行動で魅せる頼もしさ・優しさといった、いわゆる社会的に定義されている「男らしさ」という部分にフォーカスされていて、生の人間らしい色気みたいなものを描いた作品ってあまりなかったように思います。
こういう感じで男性を描いた作品ってあまり、いや、ほぼ、ないですよね・・・教えてくれたらジャン=ポール・エヴァンのチョコを贈りたいくらい教えて欲しい。
*唯一の例外は一部のBL作品。
一話の最後でいきなりヴィクトルの全裸、それも完璧に鍛えられたセクシーな身体、がバーンと映って度肝を抜かれた視聴者も多いのではないでしょうか(もちろんちゃんと隠してますけど)。
*どうでもいいですが、全裸芸をする芸人って定期的に現れますよね。
また、ヴィクトルやユーリがカツ丼を食べた後に唇が少しテカテカしている部分を出してほしい、と監督が言っていたという話を何かの雑誌で読んだ記憶がありますが、まさにこういった部分ですね。
*会社の報告書と違い、芸術作品は細かいこだわりが大切。
こういう、男性の身体的なセクシーさって、アニメに限らず社会的に割と無視されてきましたよね。
それって、そもそも社会で何か決めたり作ったりしている人が圧倒的に男性だったからだと思うんですけれど。
で、今回のユーリの大ヒットは女性も男性の身体的なセクシーさに魅力を感じるし、熱狂するんだということを明らかにしちゃったんですよね!!
そういうものを示してくれるものがほとんどない故に、一筋の光明みたいにこういう作品が出てくると、そりゃ人気になりますよね。
作品自体がとても良く出てきているというのも、もちろん大きいと思いますが。
ユーリは「男性の色気」を見事に描き切ったという点で過去の女性向け作品とは一線を画する、まさに時代の転換点となるような作品だと強く言いたいのです。
私たちは、時代の転換点となるアニメが爆誕した歴史的瞬間に立ち会っていたわけです。これこそ、「尊い・・・!!」ですよ。
そしてもう一つ、むしろこちらの方が一般的にはフォーカスされていますが、勇利とヴィクトルの関係性、これはBLだとかなんだか置いといて本当に素敵ですよね。
私が今まで見た様々な作品の中で、この2人の関係に近いなと思ったのは日本文化遺産の一つ(違うの?)「BANANA FISH」の英二とアッシュですね!!違う部分も多いんですが、結構似てますよね、ほんと。
そもそも、ユーリでの2人の描かれ方には、人の関係をラベリングすること自体への疑問を投げかけたいという製作陣の意欲を感じます。
長くなってしまいそうなのでこれに関してはまた次の記事で書きたいと思います。